谷村歯科医院ブログ
-
睡眠と口腔顔面痛
こんにちは、口腔外科医の鈴木孝美です。 今回は、『睡眠と歯や顎の痛みが関係している』というお話をします。 睡眠が順調でないと、様々な原因により人の健康に影響を与える可能性があります。 睡眠時無呼吸症候群などの睡眠関連の呼吸障害は、心血管疾患や高血圧のリスクを高める可能性があり、糖尿病にかかりやすくなったりします。筋肉や骨は睡眠不足に対してとても弱く、関節リウマチ、腰痛、顎関節症などを発症している患者さんの90%が睡眠不足だったとの論文もあります。 口腔顔面痛領域では、睡眠障害が咬む筋肉の痛みや頭痛を引き起こす可能性があります。 睡眠の定義と私達が眠る実際の理由は、人生の謎の1つであり続けています。その謎を考えてみましょう。 基本的な睡眠は、非急速眼球運動睡眠(ノンレム睡眠)と急速眼球運動睡眠(レム睡眠)に分類され、人間はこのノンレム睡眠とレム睡眠を交互に発生して、眠っています。 ノンレム睡眠は、総睡眠時間の80%を占めてほとんどの体と脳はここで回復します。 レム睡眠はほどんどの夢がこの状態で発生するため、夢睡眠とも呼ばれます。 レム睡眠は、脳の活動状態が覚醒状態と類似しています。しかし脳は活動しているが、筋肉の麻痺があるために、睡眠中に夢を行動できない仕組みとなっています。 口腔顔面痛に関連する最も一般的な睡眠障害は次の3つです。 ① 不眠症 ② 無呼吸症候群 ③ 歯ぎしり この中で今回は③の『歯ぎしり』についてお話致します。 歯ぎしりの定義は、『歯の食いしばりまたは研削、および下顎骨のブレースと突き刺しを特徴とする咀嚼筋活動』です。 睡眠中に歯ぎしりが起こると、日中の歯ぎしりとは違って、顎関節症を引き起こす可能性があると言われています。 睡眠中の位置に関しては、歯ぎしりの74%が仰臥位(仰向け)で、側方位は23%であることが分かっています。 睡眠中の歯ぎしりは、歯と歯に詰めた人工的な修復物を壊したり取れたりすることがあるため、歯ぎしりをしても歯と歯がぶつからないようにする必要があります。 歯を保護するには一般的に歯にかぶせる『マウスピース』があります。 このマウスピースですが、上の歯にカバーをします。ただしあまりにも歯ぎしりが強度で、下の歯にダメージが行く場合は下の歯にもマウスピースを装着します。 更にマウスピースの素材ですが、ペットボトルのように硬いハードタイプとシリコンのように柔らかいソフトタイプがあります。 歯ぎしりは、自分の歯やつめ物やかぶせ物を摩耗させたり壊したりする危険があり、歯以外にも顎の痛みや引っ掛かり(顎関節症)を引き起こします。 これらをしっかりと防ぐには、ハードタイプのマウスピースが必要です。 ソフトタイプのマウスピースは一見楽そうに見えますが、厚みがハードタイプより厚く、強い歯ぎしり食いしばりでちぎれたり、噛むと動いて顎関節に痛みが出てくることがあります。 そのため当院でお作りするマウスピースはハードタイプになります。 現代人の日常生活は、十分な睡眠をもたらさないことが多いです。 多くは睡眠障害に関連しており、良い睡眠を得るのが必要になっております。 よりよい睡眠を得るには次の10の項目があげられます。 ① 平日と終末の両方で定期的な起床時間を維持する。 ② ベッドでの過度の時間を避ける。 ③ 交代制で働く場合を除いて昼寝を避ける ④ 就寝前に食べ物、カフェイン、アルコールを避ける ⑤ 夕方ではなく一日の早い時間に定期的に運動する。 ⑥ 就寝前にリラックスできる何かをしてみる ⑦ 睡眠が困難な場合は時計を見ないようにする ⑧ お腹が空いたら寝る前には軽食を食べるだけにする ⑨ 寝る前に心配しないようにする。 ⑩ 寝る前にはお風呂に入って、眠りにつく時間をゆったり迎える。 健康を保つために、歯の具合も良好でないと不便です。 当院では虫歯や歯周病とともに歯ぎしり・食いしばりのある患者様には治療が一段落した段階でマウスピースをお作りしていますので、安心してお任せ下さい。 お口の中の健康は全身の健康に繋がります。 歯科医師 鈴木孝美
-
お子さんの歯磨き攻略法!
みなさんこんにちは( ¨̮ ) 皆さんはお子さんの歯磨きスムーズに出来ていますか? 親御さんの「しっかり虫歯予防をしてあげたい!」という気持ちとは裏腹に、なかなか歯磨きをさせてくれないお子さんが多いと思います。 今回はなぜ歯磨きを嫌がるのか、そしてどうしたらスムーズにお口のケアをする事が出来るのかを一緒に考えていきたいと思います! 【子供が歯磨きを嫌がる理由】 ・お口の中を触られるのが嫌 歯磨きに慣れていないお子さんでしたら、歯ブラシがお口に入るのは不快に感じてしまいます。 特に歯茎や舌などの歯以外の部分に歯ブラシが当たると、刺激を感じやすいため、拒否反応を示してしまう恐れがあります。そのため、小さい頃から徐々に慣らしていく必要があります。 ・遊んでいるので磨きたくない 遊んでいたり、絵本やテレビを見ている途中で強制的に歯磨きをしてしまうと、意識や行動の切り替えができないため、歯磨きを嫌がる原因になります。 子どもの様子を伺いながら、落ち着いたタイミングをみて歯磨きをしましょう。 ・歯磨きが怖いから嫌 夜は親御さんも疲れている時間帯になります。 スムーズに歯磨きができない場合、お子さんが嫌がっていても無理やり歯ブラシをしたり、場合によっては押さえつけて歯ブラシをしているかもしれません。 そうした経験や記憶が重なってくると、「歯磨き=怖い」というイメージが植え付けられ、歯磨きが嫌になることがあります。 お子さんが上手く歯磨き歯磨きができなくても、落ち着いて優しく対応するようにしましょう。 ・仕上げ磨きが痛い 皆さんは歯ブラシ、正しく持てていますか? 歯ブラシの正しい持ち方は鉛筆と同じ持ち方です。 持ち方が正しくないと必要以上に力が入ってしまい、赤ちゃんが痛みを感じる原因となってしまいます。 【年齢的の磨き方】 ・0歳 生後6~9か月頃から前歯が生え始めます。 清潔なガーゼ等で歯を拭いましょう。 1歳半の健診を受けた子どもの内、2~5%に、虫歯が見つかると言われています。 将来歯が生え始めて、いきなり歯ブラシをして嫌がれたりしない為にも、実はこの時期からお口の中に触れて慣れさせる事が重要となってきます。 歯磨きの歌の動画を流してみたり、頬を触るなどのスキンシップをとってみるのも効果的です! ・1歳 上下の前歯が生え揃います。 上の前歯が生えてきたら「本人用」と「仕上げ磨き用」の2本の歯ブラシを用意して、いよいよ歯ブラシをスタートさせます。 食事をしたら歯を磨くということを習慣化させましょう。 ・1歳半 奥歯(第1乳臼歯)が生え始めます。 生えたての奥歯は食べかすや歯垢が非常に溜まりやすい形状になっており、虫歯の原因菌であるミュータンス菌も、奥歯が生え始める頃から口の中に定着してくると考えられています。 加えて、甘い飲み物やお菓子を口にするようになり、虫歯の危険度が高まります。 また、できればこの頃までに卒乳する事をおすすめします。 ・2歳 前歯と奥歯の間の歯(乳犬歯)が生えます。 イヤイヤ期の歯磨きは「頑張ってるね」「えらいね」など上手く褒めながら磨きましょう。 特に前歯の裏、奥歯の溝など虫歯になりやすい場所から磨く工夫をすると良いでしょう。 ・3歳 1番奥の歯(第2乳臼歯)が生えてきます。 乳歯20本が生え揃う3歳児健診では、噛み合わせのチェックも可能となります。 虫歯になりやすい奥歯の歯と歯の間はできるだけフロスを使用しましょう。 【嫌がらないための工夫ポイント】 ①小さい頃から慣れさせる はじめは歯の本数も少なく、無理に磨く必要はありません。 歯ブラシが歯や歯茎に当たる感覚を早いうちから覚えさせてあげましょう。 最初のうちは持ち手が丸く、柄の短い赤ちゃん用の歯ブラシがおすすめです。 慣れてきたら自分で持たせてあげて、口に入れたり噛んだりして慣れさせてあげましょう! 必ず転んだりして喉の奥を突かないよう見守ってあげてください。 ②好きなキャラクターや色の歯ブラシを使う 歯ブラシにはたくさんの種類があります。 ある程度の年齢になると、好きなキャラクターや色があると思いますので、そのキャラクターや好きな色の歯ブラシを使うことで、毎日の歯磨きの時間が楽しみになります。 薬局や歯科医院でお子さんと一緒に歯ブラシを選びましょう! ③味や香りのある歯磨き粉を使う フルーツの味や匂いがあるものが多いので、お子さんの好きなものを選んであげましょう。 何種類か用意して、歯磨きの前に一緒に選んだり、混ぜたりしてみるのも、歯磨きの時間が楽しくなるポイントです。 ④親御さんも一緒に磨く いくらやり方を教えても、子どもはいきなり自分では歯磨きはできません。 親御さんも一緒に歯磨きをしてやり方を見せてあげましょう! そして、会話やスキンシップも交えながら歯磨きの時間を楽しい時間にすると良いです。 ⑤歯磨きをする時間を決める それまで楽しく遊んでいたのに急に歯磨きとなると、多くのお子さんは嫌がるでしょう。 きちんと、「◯時からは歯磨きの時間」と決めて習慣化すれば、遊んでいても切り替えられるようになり、歯磨きが嫌でなくなるでしょう。 ⑥歯磨き動画やアプリを活用する どうしても歯磨きを嫌がる、ぐずって仕上げ磨きをさせてくれない場合に、歯磨きの動画やアプリを活用することもおすすめです。 可愛いキャラクターと一緒に歯を磨けることで、やる気のスイッチを入れてあげましょう。 ⑦歯磨き後に褒める 歯磨きが終わった後は、大げさなくらいしっかりと褒めてあげましょう! もし上手くできなかったり、途中で終わったとしても頑張ったことを褒めるようにしてあげましょう。 褒めることで、歯磨きを好きになってもらいましょう! 【まとめ】 お子さまの虫歯の予防として、歯科医院でのフッ素塗布やシーラントなども大切ですが、それよりも大事なのが毎日のお家でのケアです! どれだけ定期検診に来ていただいていても、お家でのケアができていなければ虫歯のリスクは高くなってしまいます。 毎日の積み重ねを大切にし、虫歯に負けない丈夫な歯を目指しましょう! 歯科衛生士 池田
-
インプラントの歴史について
みなさんこんにちは(*´▽`)ノ いろんなことが新しく始まる4月ですね! 新学期、新社会人などにわくわくしていると思いますが、ぜひ新生活に向けて検診に来てくださいね☺️ 今回は1度は耳にしたことがある"インプラント″について面白いお話しをしたいと思います。 まず皆さんはインプラントがどのようなものか知っていますか? インプラントは人工歯とアバットメントと呼ばれる連結部分とフィクスチャーと呼ばれる人工の歯の根っこでできています。 なんと!このインプラントの始まりはうさぎ🐰なんですよ!面白いですね〜 ウサギとインプラントがどう関係するの?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。 「インプラント」とは、人工の目であったり耳であったり…臓器といわれるものに医学的にいろいろと応用されている、体に埋め込む器具の総称のことです。 歯科の世界でインプラントと言うと、“歯科用インプラント”といって、失ってしまった永久歯の代わりに使われている“第三の歯”というイメージでしょうか? 最近はとてもよく聞く治療法になってきているので、ご存じの方も多いと思います。 大切な歯が事故などで失われてしまった時の選択肢として、入れ歯やブリッジなどの治療方法がありますが、歯科用インプラント治療は、歯の根の代わりになるチタン製の人工歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯を装着し、噛めるように機能の修復をしたり、見た目の審美性を整えたりします。 今では日本でもインプラント治療を行っている歯科医院はたくさんありますが、ではそのはじまりは?となると、タイトルにもあるようにウサギと関係してくるのです。 その歴史は、1952年スウェーデンのペル・イングヴァール・ブローネマルク博士が発見したある現象から始まります。 博士がウサギの体内にチタン製の器具を埋め、後から取り出すという実験をしていたところ、偶然にも骨と器具が強固に結合してしまい外すことができなくなってしまうということがありました。 この出来事から、博士は様々な検証や実験を重ね、「チタンが諸条件を満たせば拒否反応もなく骨と強く結合する」と、私たち人間に応用ができるまでに構築していきました。博士はこの方法をオッセオインテグレーション(骨結合)として発表しました。 ブローネマルク博士は、このチタンと骨組織がピッタリと結合してしまうという現象を歯科治療に応用できないか?という考えからチタンと骨組織の研究を続け、 1965年に初めて実用化されたのがチタン製の人工歯根(インプラント)を使った治療なのです。 日本においては、このオッセオインテグレーションの技術が応用されたインプラントは1983年に東京歯科大学で開始されたそうです。 このような実験中の偶然によって発見されたインプラント治療の原理は、まさに画期的なものでした。 顎の骨と結合したインプラントは、天然の永久歯と同じように咬め、しっかりとメインテナンスを続ければ簡単に外れることなく永続的な使用に耐えるのです。 このような優れた耐久性と、もとのように噛めることから、インプラントは「第二の永久歯」とまで呼ばれ、失われた歯を再生するに近い、優れた歯科治療とされているのです。 インプラント治療は歯を失われた方にとっては、その不自由さを軽減してくれるとても便利な治療法になります。 ただし、しっかりとした技術と知識が必要な治療法でもあります。 もし、インプラント治療をお考えの方は、そのメリット・デメリットなどをきちんと説明させていただくのでお気軽にご相談下さい! 歯科衛生士 山口
-
歯ぐきが下がる
こんにちは(^^) 暖かい日が多く、春を感じますね🌸 突然ですがみなさん、歯茎が下がる原因って知ってますか? ①歯周病 歯周病になると骨が破壊されて溶けてしまうので、それに伴って歯茎も下がっていきます。 ②ブラッシングの力が強すぎる 歯ブラシを力任せにゴシゴシやっていると、歯茎が傷つき下がってしまいます。 ③歯ぎしり・食いしばり 寝ている間や無意識のうちに歯ぎしりや食いしばりなどをしていると、歯や組織に過剰な負担がかかり骨が下がってしまい歯茎が下がる原因となってしまいます。 ④詰め物や被せ物が合っていない 詰め物や被せ物にずれがあると、その部分の歯茎に炎症を起こして歯茎が下がってしまうことがあります。 ⑤爪を噛んだりする癖がある 歯を支えている組織がダメージを受けてしまい歯茎が下がることがあります。 ⑥歯並びが悪い 歯列から外にはみ出している歯の外側の骨が薄かったり、歯磨きをする際に他の歯より力がかかりやすいために、歯茎が下がりやすくなります。 ⑦矯正治療の影響 成人になってから歯列矯正を行うことにより、歯茎が下がってしまうことがあります。 これは、もともと重なっていて歯茎がダブついていたのが歯を並べたことによって引き締まったため下がったように感じます。 ⑧加齢 歯茎に異常がなくても、加齢によって徐々に下がってしまうことがあります。 と、様々な理由が考えられます。 歯茎が下がることによる症状として ・歯根が露出することでしみるたり不快感が出る ・歯の出ている部分が多くなるので歯が長くなったように見える ・歯がぐらぐらする といったことがあげられます。 何か当てはまる事はありましたか? 気になったらすぐ歯科医に相談しましょう! ■そういえば、歯医者っていつからあるんでしょう…? 701年(大宝元年)に定められた『大宝律令』などには、医学生の学びの対象として目耳口歯科と明記されているそうで、当時は目、耳、口、歯は1つの科でした。 また16世紀半ばには木を彫って作った「木入れ歯」が実用化されました。 元々は仏師が作っていましたが、江戸時代になると「入れ歯師」と呼ばれる専門の職業が定着します。 さらに幕末から明治維新にかけては「入れ歯師」の他にも、「口中医(こうちゅうい)」や「開業歯科医」、「歯抜き師」、そして街で薬を売ったり抜歯をしたりする「香具師(やし)」といった様々な専門家が出来上がり、現在の歯科の領域を分けてきたそうです。 その後、1883年(明治16年)に新たな歯科医籍が作られ、医師と歯科医師は法的に分けられたのでした。 現代とは違い設備が全く整っていない時代でも、その時にできる範囲の処置をその時代の人が考え工夫して今に至ると思うと凄いことですね! いつの時代でも大切な自分の歯。 自分でしっかり守っていきましょう。 歯科アシスタント 松本
-
飲んだ薬はどのようにして体の中で働くのか?
こんにちは、歯科医師の鈴木です。 今回は、飲んだお薬がどんな風に身体の中で働くのかをお話したいと思います。 薬を説明するには、難しい言葉ですが大きく二つに分けて 薬物動態PHAMACOKINETICSと 薬力学PHARMACODYNAMICSとがあります。 今回は薬物動態についてお話致します。 薬物動態は薬の体の内での移動=代謝を意味します。 ① 薬を飲む ② 血液への薬の吸収 ③ 血液から効かせたい臓器への薬の移動 ④ 薬の身体の外への排泄 以上の話を中心に説明します。 薬物動態 PHAMACOKINETICS お口から飲むお薬は、ほとんど十二指腸で吸収されます。 十二指腸は胃よりも酸性度が低いからです。 そして薬は肝臓から出ている代謝酵素によって代謝されます。 薬物代謝の主な目的は、肝臓で薬物をより溶性(水に溶けやすい性質)の高い形に変換し、腎臓、肺、胆汁、皮膚、便に排泄されやすくすることです。 肝臓は薬を代謝する重要な臓器であり、薬は主に大規模なシトクロムPー450(CYP)スーパーファミリー酵素によりほとんどの薬物はCYPによる生体内変換を受けます。 吸収されなかった物質は血漿中に残り、最終的に腎臓を通過して尿中に排泄されることになります。 薬の飲むとどのように血液中に薬が漂うかを示す表があります。 それを血中濃度曲線といいます。 血中濃度曲線 • 血液中の薬の時間経過は山型曲線を描く。 多くの薬は血液中の濃度が一定以上になると効き目が現れ、それ以下になると効き目が消えていきます。 • この血中濃度曲線は、その薬がどのくらいの時間で効き目を現し、いつまでそれが続くかなど薬の体内での行動を表します。 • グラフの1番高いところが最高血中濃度(CMAX)、そこに到達するまでの時間(TMAX)は、薬の効き目のスピードを知る目安になります。 • CMAXの半分に減るまでの時間が半減期(T1/2)で、半減期が長いほど薬は体の中に長く留まり、効き目が続きます。 • 濃度曲線の下の面積をAUCといい、これが大きいほど体の中で薬がたくさん利用された(=バイオアベイラビリティが高い)と判断できます。 では、次に連続して飲む抗生物質などを考えてみましょう。 薬を連続して飲むと、定常状態という薬に効果が出ている状態を考えてみます。 定常状態 (STEADY STATE) 薬が血中に入ってくる量と出ていく量が等しくなる状態 定常状態とは、薬を一定時間ごとに繰り返し投与する時、特に抗生物質があげられますが、身体の中で薬が効いている、有効域に達している状態を意味します。。 下の図はバンコマイシンという抗生物質を飲んだときの曲線です。 連続して飲む必要がありますが、なぜ一日三回毎食後飲まないといけないかというと、薬の有効域という薬がやっと効き出す領域にたどり着くまでには、最低4回目から5回目の服用で、やっと薬が効いてきているという事が分かります。 なので、連続して飲まないといけない薬は必ず用法を守って連続して飲んでいく必要があります。 今度は薬物排泄について考えてみましょう。 薬が体から排出される時間は薬を飲むのをやめたら、すぐに身体の中に薬がなくなるわけではないのです。 薬は連続で飲むのをやめると血液中の薬の濃度は半分になり、徐々に時間をかけて身体から薬の量が減っていき、時間がかかるのです。 このように薬の連続服用をやめても、薬の種類によっては、身体の中にまだ残っている薬もあります。 歯科でよく使う抗生物質は、この身体の中で残っている分も含めて3日間から4日間ときめております。 人間の身体は非常に複雑で、すごく精密にできていて、研究が進むとこのような複雑な代謝も解明されています。 複雑な薬の身体での代謝や分解を理解して、薬を処方しています。 ダイナミックな人間の身体はとても勉強していて面白いです。また論文などを拝読しましたら皆さまにお知らせいたします。 歯科・口腔外科医 鈴木孝美
-
『歯』にまつわる情報について
こんにちは! 歯は全部で何本あるか知っていますか?歯があるのが当たり前になっていて、あまり気にしている方は少ないと思います。そこで歯について考えてみましょう! まず乳歯は20本、永久歯は(親知らずを含む)32本あります。 乳歯は永久歯と比べて小さく、エナメル質は薄く弱い為、むし歯になると急速に進行して神経まで達するような痛みを伴うむし歯になりがちです。 まずは下の前歯が生えてきたらガーゼなどでお手入れを始めます。 さらに上の歯が生えてきたら、一日一回は歯みがきが必要です。 さらに生え始めたばかりの歯(乳歯と永久歯)は菌に弱いため、虫歯になりやすく進行も早いです。 特に混合歯列期(乳歯と永久歯が混ざっている時)は歯ブラシで磨きにくい為、親御さんが仕上げ磨きをしてあげるといいですね♪ さらに細かく見ていくと、歯の中の構造は『エナメル質』・『象牙質』・『セメント質』・『歯髄』『歯肉』・『歯槽骨』・『歯根膜』からできています。 歯が口の中に露出している部分を『歯冠』、歯冠より下の部分を『歯根』といいます。 『エナメル質』歯冠部の表面を被っている人間の身体組織の中で最も硬い組織です。 でも、酸に簡単に溶けてしまうはという弱点があります。 『象牙質』エナメル質、セメント質の内側にあり、歯冠部から歯根部までの歯を形づくる組織です。 エナメル質よりも柔らかく、酸に溶けやすい組織です。 象牙質には象牙細管という細い管が通っていて、管の中は組織液で満たされています。 『セメント質』歯根部表面を被っている組織で、歯根膜によって歯槽骨と結合しています。 『歯髄』一般に神経と呼ばれる組織で、神経線維のほかに血管やリンパ管などが通っています。象牙質に栄養を補給しています。 『歯肉』歯肉(歯ぐき)は、歯根を取り囲んでいます。歯肉はとても軟らかい組織であり、ちょっとした刺激で傷ついて出血したりします。 『歯槽骨』歯肉に包まれて歯を支えているのが歯槽骨(顎の骨)です。歯は歯槽骨のくぼみにしっかりと根を下ろして、物を噛む時などに加わる強い力に耐えています。 『歯根膜』歯根膜は歯周靭帯とも言われ、歯と歯槽骨の間をつなぎ、まるでクッションのように歯にかかった圧力を吸収・緩和しています。 また極端に固いものを噛んだ時に痛いと感じるのは、この歯根膜が圧力センサーの働きをしているからです。 歯は食べ物を噛み砕いて食感を楽しんだり、会話をする上での発音を助けたり、顔の形を整えてくれたりなど、役割があるので、1本1本大事にしましょう♪ ○8020運動 『8020運動』とは、日本歯科医師会が推進している「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。 20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足することができると言われています。 そのため、「生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえるように」との願いを込めてこの運動が始まりました。 食事は生活の中でもとても大切な事なので、年齢を重ねてもしっかり噛めて、味わえるように歯を大切にしていきましょう! その為には定期検診やセルフケア(お家でのケア)が大切です。 定期検診では、虫歯の早期発見、早期治療や歯周病の予防、歯垢、歯石除去などができる為、虫歯や歯周病が悪化する前に発見できます。そのため、最悪抜歯になるリスクを減らすことができます!! しかし歯科医院には毎日通うことはできないため、セルフケアが特に大切になってきます。 鏡を見ながら1本1本しっかり歯ブラシを当てて磨けるといいですね♪ 朝起きる時に細菌が一番増加するので、寝る前の歯磨きを丁寧にしっかり磨くのがおすすめです^ - ^ぜひやってみてくださいね! 歯科衛生士 楠
-
シーラントで虫歯を予防しよう!
みなさんこんにちは( ¨̮ ) お子さまの歯磨きで、「仕上げ磨きをあまりさせてくれない」また、「奥歯までしっかりと磨けているか心配」というお悩みはありませんか?歯は唾液の中のカルシウムなどを吸収して徐々に強くなっていきます。しかし、生えたばかりの歯の表面は未完成で弱いため虫歯の進行も早いので、積極的に予防をすることが必要です!そこで虫歯予防の1つにシーラントという方法があります。今日はそのシーラントについて詳しく説明をしていきます! 【シーラントとは】小窩裂溝填塞(しょうかれっこうてんそく)と呼ばれることもある、虫歯の予防方法のことです!フッ素が配合された歯科用樹脂素材(レジン)でコーティングすることで歯を虫歯から守るというものです。 適応歯は、萌出後間もない健全な乳臼歯や永久歯が対象になります。乳歯や生えたばかりの永久歯は、エナメル質が若いため表面の気孔が多く開いています。また石灰化が不完全のため、特に6歳臼歯と呼ばれる奥歯は噛み合わせの力が強く働くので、しっかり虫歯予防をしなければ永久歯が生えそろう前に虫歯になってしまう可能性があります。 そして6歳臼歯をはじめとした奥歯は咬合面(咬む面)の溝が複雑な形状をしているため、普段の歯磨きだけではなかなか汚れが落としきれないことがあり、シーラントによる虫歯予防ではこの溝を埋めるために溝に食べカスやプラーク入り込んでしまうことがなく、また歯磨きもしやすくなるため、効果的に虫歯予防ができるようになるのです。 【シーラントの流れ】では実際にシーラントをどのように塗布するのか、治療の流れを説明いたします。 ①最初に歯の溝の部分の汚れを取り除きます。 歯の溝には食べかすのほか、ベッタリとついた歯垢が入り込んでいるため、専用のブラシでしっかりと取り除きます。 ②歯を乾燥させてシーラントの前処理の薬剤を塗布し、数秒置いてから水で洗って乾燥させます。 次に歯の表面と溝の中の水分を取り除き、シーラントがしっかりとくっつくような下処理剤を塗布します。(この操作は行わない場合があります) ③歯の溝にシーラントを塗ります。 歯の溝の中がきれいになったらシーラントを細いノズルを使用して、隙間ができないように、また多すぎないように慎重に塗布していきます。 足りないところがあるのはだめですが、多すぎて他の表面に溢れてしまうと噛んだ時にそこだけ当たってかみ合わせがおかしくなてしまいます。 そのため、シーラントの塗布は慎重に、またどうしても溢れてしまった場合は固まる前にしっかりと拭き取ります。 ④光を当ててシーラントを硬化させます。 シーラントの液は、光を当てると固まるようにできています。(特定の波長の光に反応して、通常は青い光です) 液の塗布が終わったら、光重合器で照射してシーラントを固めます。 ⑤シーラントが正しく塗布できているかチェックをする。 光を当てたあとは、短針などを用いて、シーラントがしっかり固まっているかチェックをします。 この時に剥がれてしまったり、隙間がある場合は再度シーラントを塗布して光を照射します。 またシーラントを塗布する面積が大きすぎたり厚すぎた場合は、ていねいに削り落として調整します、 確認が終わったらシーラントの塗布は終了になります。 ★シーラントは歯を削らないため痛みがありません。小さなお子さまでも安心して処置ができます!そしてシーラントをした歯は、していない歯に比べると、4年以上で60%も虫歯予防効果があることも研究結果で分かっています! 【⚠︎︎注意点】・シーラントだけでは虫歯予防はできない! シーラントは虫歯予防にとても効果を発揮しますが、奥歯の溝だけが虫歯になりやすいという訳ではありません。歯と歯の間も虫歯になりやすい部位です。こちらは、シーラントでは予防できないため、しっかりした歯磨きが必要です!歯と歯の間は糸ようじやデンタルフロスなどを使い綺麗にしましょう。また、フッ素を併用するとより虫歯になりにくくなります。 ・シーラントは永久的ではない シーラントはむし歯治療の詰め物と比べると耐久性は少し劣ります。 歯ぎしりなどで取れてしまったり、時間が経つととれてしまうこともあります。そのため定期的に取れていないか、他に虫歯がないかを定期的に歯科医院で検診を行う必要があります。 【虫歯予防の1つフッ素との違い】虫歯のなりやすい箇所の一つである奥歯の歯の溝の予防に特化した予防方法がシーラントです。 それ以外の予防方法ではフッ素塗布なども有名ですが、フッ素塗布は歯全体の歯質強化が目的のため、シーラントとフッ素は違います。 【まとめ】 シーラントの最大のメリットは、虫歯になりにくくなるということです。 ですが、シーラントを行ったからといって、必ずしも虫歯にならないわけではありません。 シーラントをした後も毎日丁寧に歯磨きをしましょう!また、乳歯や生えたての歯への処置が最も有効ですが、大人の永久歯にも効果があります。大人でも歯の溝には虫歯が多く、歯の溝の奥に溜まった汚れは歯ブラシで除去しにくいところもあります。大人も子供もシーラントを上手に活用して、虫歯になりにくい健康な歯を手に入れましょう! 歯科衛生士 池田
-
歯並びはなぜ悪くなるのか?
歯並びはなぜ悪くなるのか? きれいに並んでいる歯並びはいいですよね。しかし歯並びはいろいろな影響できれいに並ばないことが多いです。 今回はどのような影響が歯並びに関係してくるのか、また歯並びが悪いとどのようなことが起きるのか説明をしていきます。◯歯並びは、歯の大きさ・あごの大きさが関係していますこれらには人種別に特徴があり、日本人はあごが小さい傾向があると言われています。 その他、成長過程での異常が原因になることもあります。無意識にやってしまった癖が、だんだん歯並びを悪くしていってしまった可能性があります。 例えば、指しゃぶりや舌の先が日常的に自然と上下の歯の間についている癖の事である舌突出癖(ぜつとっしゅつへき)、頬杖(ほおずえ)、口呼吸など子供の頃に癖づいた行動が歯並びに影響することがあります。 そのため、このような癖があるお子さんは保護者様が注意して改善するようにしましょう。 また、鼻がアレルギーなどでいつも詰まって口で呼吸している場合も唇を閉じる力が弱くなって前歯の歯並びが悪くなりやすいです。耳鼻咽喉科を受診して治療するようにしましょう。 現代人の食事は加工された柔らかい物が多く、そのため顎の発達が悪いと言われています。顎が小さいと歯が全部生え揃うスペースが無いため歯並びが悪くなってしまいます。 小さいうちから柔らかいものだけでなく、しっかりした食感の食べ物を取り入れるようにしましょう。 ◯歯並びが悪いとどのような事が起こるのでしょうか? 悪い歯並びは、歯や口腔内に悪影響なだけでなく、あなたの身体の不調に関係しているかもしれません。 ・虫歯になりやすくなる・将来歯が抜けてしまう可能性が高くなる・歯周病が進行しやすくなる・顎関節症になりやすくなる・親知らずや歯周病の影響を受けやすくなる他にも・歯や顎が動かしにくい・歯が欠けたり、擦れたりしやすい・食べ物が噛みにくい・すぐ歯にはさまる・頭痛や肩こりがひどい身体にこんな症状が出ていたらそれは歯並びや噛み合わせのせいかもしれません。 ◯悪い歯並びの症状例 次に悪い歯並びの種類について説明します。実にいろいろな種類の悪い歯並びがあります。・叢生(そうせい)歯が上下にデコボコだったり、となりの歯と重なっていたりする状態。『八重歯』や『乱ぐい歯』と呼ばれる。 ・上顎前突上の前歯が前の方に飛び出している状態。上のあご全体が突出していることもある。いわゆる『出っ歯』のこと。 ・下顎前突咬んだときに下の歯が上の歯よりも外側になっている状態。歯だけが傾いている場合や、下のあご全体が前に出ている場合がある。 ・開咬奥歯が咬み合っているときに前歯が開いている状態。前歯で物を咬み切りにくく、発音もしにくい可能性がある。 ・空隙歯列(くうげきしれつ)歯と歯の間にすき間がある状態。特に前歯の中心にすき間があると物が挟まりやすいだけでなくとても目立つ。 ・過蓋咬合(かがいこうごう)上下の歯を咬み合わせたときに上の歯が下の歯をほとんど見えないほど深く覆う状態。食べ物を細かく砕く、すりつぶすなどがしにくい咬み合わせ。 ・交叉咬合(こうさこうごう)左右のバランスが悪く、歯列の一部または半分ほどがずれてしまっている状態。顔がゆがんで見えることがある。 ・顎変形症一般的な歯を動かす矯正治療のみでは十分な咬み合わせにするのが難しい難症例。骨格的なものなので、あごの骨を削るなどの外科手術も併用する。(この場合の矯正治療は健康保険適応になる場合があります) ★歯並びが良くなると審美面や口腔内の健康はもちろん、身体全体の健康面でたくさんのメリットが得られます。現在、少しでも違和感や症状、不安がある方は矯正歯科または定期検診で行く歯科医院で相談してみましょう。 歯科アシスタント 松本
-
俳句から読む江戸時代のむし歯事情
みなさんこんにちは¨̮ )/早いものでもう気がついたら1月でびっくりしました〜🤦♀️今回は皆さんが1番気にしてるであろう、『むし歯』のお話です。現代人を悩ませている『むし歯の悩み』って、今の時代だけなのでしょうか?歯の悩みはどんな時代にもあるようですよ〜🥲日本の“ わびさび ”を代表する俳句から、江戸時代の当時のむし歯事情を想像してみましょう! ●昔の人もむし歯になったのか?時代とともに、食生活や生活スタイルはずいぶんと変化しました。 ですが、はるか昔の生活を俳句から読み解いていくと、お口の健康に関する悩みは、今も昔も変わらずあったことがわかります。 それどころか、当時は今のように治療が進んでいなかったため、多くの人が歯を失ってしまうほど症状が悪化することが多かったようです。そんな『歯』に関連した俳句は、古くは江戸の時代からありました。 ●俳句の中のむし歯江戸時代を代表する2人の俳人も、実は私生活では、歯が痛くて悩んでいたそうです。 その痛みや苦しみさえも風情ある俳句にしてしまうなんてすごいですが、本人たちは大変だったでしょうね! 〜松尾芭蕉〜 江戸時代前期に活躍し、日本でその名を知らない人がいないほど有名な、松尾芭蕉。 旅をしながら、美しい自然を旅情たっぷりに詠んだ『奥の細道』が、代表作として知られていますよね。 『閑さや岩にしみ入る蝉の声』など、趣のあるわびさびを織り込んだ多くの俳句は、誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。 ですがそんな芭蕉も、歯の悩みを抱えていました。そのことがわかる俳句が、こちら。 「 結ぶより 早歯にひびく 泉かな 」 手に泉の水をすくうと、口へ運ぶより先に、水の冷たさが歯にしみるように感じる。(その他の解釈もあり) 「 衰へや 歯に喰いあてし 海苔の砂 」 芭蕉が海苔を頬張ったときに、混じっていた砂を噛んでしまい、ズキンと痛みを覚えたその瞬間に身の衰えを切実に感じた。 これらの句は芭蕉が四十代の頃の俳句とされていますので、加齢にともなって歯茎が弱まり、歯周病が加わっていたのではないか?と想像されます。 歯の状態から体の衰えを痛感し、嘆く気持ちを句で表現しながら旅をしていたのでしょうか? 〜小林一茶〜 むし歯に悩まされていたのは、芭蕉だけではありません。 「やせ蛙 負けるな一茶 これにあり」などの俳句を残した、江戸時代後期に活躍した小林一茶は、49歳のときには全ての歯が抜けてしまったようです。 65歳で亡くなったそうなので、晩年はずいぶんと不自由な生活だったことが想像されます。 「 歯が抜けて あなた頼むも あもなみだ 」 最後の歯を失って歯の大切さを悟り、「南無阿弥陀」の唱えようとするが、歯が無いため「なむあみだ」ではなく、「あもあみだ」となってしまう。 自虐的にも捉えられるユーモアと悲しさをまじえて、このような句を詠んでいます。 入れ歯はまだ広く普及していなかったようですから、その後の食生活を想像すると、晩年の苦労がうかがえますね! ●江戸時代の虫歯治療 江戸時代の抜歯方法 江戸時代の治療風景 江戸時代に国内で初めて製造された歯ブラシは、鯨ひげの柄に馬の毛を植毛したものでしたが、なかなか広まらず、歯ブラシが本格的に普及したのは大正時代になってからだそうです。また、江戸時代の人の骨を調べると、年齢を重ねたときに健康な歯を維持することが難しく、歯を失ってしまう人がとても多いことがわかるそうです。当時の口中医や入れ歯師と呼ばれる人たちによる治療は、薬の塗布や抜歯がメインだったようで、むし歯治療はまだまだ進んでいなかったというわけですから、それも納得です。現代でも有名な俳人が、当時むし歯で困っていたなんて、有名・無名にかかわらず、歯の悩みは万人共通だったのですね。 少し親近感さえ湧いてしまいますが、むし歯や歯周病を甘く見ると歯を失ってしまう怖さは、江戸の頃から変わらないことがわかりました。歯に令をつけた『齢』を『よわい』と訓み、人間の年や人生・生命を示しているのも、まさに人間の歯の変化が、その人の齢を表すことからきているのでしょう。ですが江戸時代とは異なり、今は歯の治療だけでなく、予防に力を注ぐこともできるようになりました。 ●まとめいかがでしたか?昔の人達はあんまり良い治療が受けられず随分と苦労したのがわかりましたね。現代社会はかなり医療が進んでむし歯を予防できるものや、虫歯になりにくくする材料がたくさんできました。皆さんも松尾芭蕉や小林一茶のようにお口の悩みを抱える前に、日々のメンテナンスを心がけて、気になることがあればぜひ早めに相談してくださいね! 歯科衛生士 山口
-
TACsという頭痛と歯の痛み
こんにちは、歯科医師の鈴木です。 今回は私が所属している日本口腔顔面痛学会で取り扱っている頭痛が、歯の痛みとして現れる場合をお話します。上のパンフレットは日本口腔顔面痛学会が推奨しているポスターです。 歯が原因でないのに頭痛のために歯の痛みが起こる場合があり、その場合は歯の痛みが全身の病気のサインとなっています。 今回は以前にもブログに書かせていただいた、歯が原因でない痛み(非歯原性疼痛)のお話をしたいと思います。1 非歯原性歯痛とは? 非歯原性疼痛とは、歯や歯周組織に異常がないのにも関わらず歯に痛みを感じる状態のことであります。一口に非歯原性疼痛と言っても、さまざまな種類があります。① 筋.筋膜性歯痛② 神経障害歯痛③ 神経血管性歯痛④ 上顎洞炎歯痛⑤ 心臓性歯痛⑥ 精神疾患または心理社会的要因による歯痛⑦ 特発性歯痛⑧ その他の様々な疾患による歯痛に分かれます。 今回お話しするのは③神経血管性歯痛です。 この単元は=頭痛となります。 脳の中の血管の一時的な炎症により頭痛が生じると、歯の神経である脳神経の一つの三叉神経という神経も興奮して、頭痛と同時に歯痛が生じるのです。この神経血管性歯痛にはさらに種類があります。① 片頭痛② 緊張型頭痛③ 三叉神経自律神経性頭痛(TACs)今回は上記3つのうち、③三叉神経自律神経性頭痛(TACs)の話をします。 2 三叉神経自律神経性頭痛(TAC)とは?TACとはTrigeminal Autonomic Cephalagiaの略です。 この病名を和訳すると、三叉神経自律神経性頭痛といいます。 この頭痛の病態は、① 一片側性の頭痛、左か右どちらかの頭痛② 頭痛と同じ側の頭部副交感神経系の自律神経症状を伴う といった症状です。 例えば、頭痛と同じ側の目が充血して赤くなったり、涙が出たり、鼻が詰まったり、鼻水がでたりという症状があります。この二つの症状は共通してあり、種類は四種類あります。① 群発頭痛(CH)② 発作性片側頭痛(PH)③ 短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNHA)④ 持続性片側頭痛(HC) 上記の図のように4つの頭痛により、痛みが歯の方向にいくのがわかります。 このように歯が痛くなってくるので、歯が虫歯などの原因でないにも関わらず歯科を受診する事が多くなるのです。(上記の右端のMIGRAINEとは片頭痛の事です) では、この4つの種類のTACsのそれぞれの特徴を話していきたいと思います。 ① 群発頭痛ある一定の期間のみ頭痛があり、何も症状がない時期もあります。 この頭痛は同じ季節や同じ時間に頭痛が起こるのも特徴です。 飲酒で発作が誘発されます。 男性に多いとされています。 頭痛の起こる時間が15分から180分です。痛みは上の歯の痛みが出るので注意が必要です。② 発作性片側頭痛と④ 持続性片側頭痛やや女性に多く30代に多く見られます。 頭痛の起こる時間は平均17分です。 この2つの頭痛にはインドメタシンという鎮痛剤が効くのが特徴です。 頭痛が起きると激痛であるため、顔を手で覆うような仕草をするのであたかも歯が痛くて苦しんでいるように見えます。③ 短時間持続性片側神経痛様頭痛発作頭痛の起こる時間は数秒で電撃様の痛みを感じるこの頭痛はとても稀な頭痛ですが、一番最初にお話しした頭痛と同じ側の目や鼻の症状が沢山出るのが特徴です。 電撃様の痛みのため、三叉神経痛という病気と似ているため鑑別しなくてはいけないです。以上が三叉神経自律神経性頭痛(TACs)に関する痛みになります。 いずれの頭痛も歯の痛みとして出ることが多いので、私達歯科医師はレントゲンや様々な道具を使い歯が原因でない痛みの場合はすごく注意しながら診療しています。 最近では神経内科のお医者さんや脳神経内科、外科のお医者さんと一緒に合同で行う学会の勉強会も増えています。 歯の痛みは単に歯の痛みではなく全身の病気のサインとなっているため、我々歯科医師も日々勉強をして必要のない治療をしないように努力しております。これを読んだ皆さまは、とりあえず歯が痛いなら、歯科医院に受診して下さい。 それから必要に応じて様々な検査をして、医師の先生と連携して痛みを無くす努力を致しますので安心して歯科に受診して下さい。 鈴木 孝美