【口腔外科医解説】 慢性腎不全や透析を受けられている患者さんの安全な歯科治療

こんにちは、谷村歯科医院の非常勤口腔外科医、鈴木孝美です。

今回は、腎臓の機能にご病気があり、医科に通院されていたり、透析を受けられている患者さんに対して、私たちがどのように「安全な歯科治療」を行っているかについてお話しいたします。

腎機能障害の進行度と検査値について

臨床の現場では、血液検査のeGFR(推算糸球体濾過量)という値が指標としてよく使われます。
これは、腎臓が老廃物を尿へ排泄する能力を示しています。
また、抗生物質などのお薬を処方する際の量の調整には、CCr(クレアチニンクリアランス)という値を用います。

クレアチニンは筋肉で作られるため、標準体型の方はeGFRとCCrをほぼ同等として考えます。
しかし、痩せている方、筋肉の病気がある方、肥満体型の方などは筋肉量が異なるため、専用の計算式を用いて正確な数値を出し、安全なお薬の量を決定しています。

慢性腎不全の患者さんに現れやすいお身体・お口の特徴

腎臓の機能が低下すると、全身やお口の中に以下のような特徴が現れやすくなります。

  • 感染しやすい 貧血や低タンパク血症、あるいはステロイド薬を服用されている影響で、通常よりも感染症にかかりやすい状態になっています。

  • お口の乾燥(ドライマウス) 特に透析を受けられている患者さんは、唾液の分泌量が通常の約4分の1に減少すると言われており、虫歯や歯周病のリスクが高まります。

  • 骨への影響(骨代謝障害) 腎機能障害によってビタミンDの活性化がうまくいかなくなると、カルシウムの吸収とリンの排泄に障害が起こります。
    その結果、低カルシウム血症や高リン血症となり、あごの骨を含む骨の強度が低下してしまうことがあります。

お薬(抗生物質・鎮痛剤)を処方する際の注意点

腎臓の機能が低下している方に「腎臓から排泄されるタイプ」のお薬を通常通り処方すると、排泄が遅れて血液中の薬の濃度が高くなりすぎ、副作用が出やすくなります。
そのため、当院では以下の点に細心の注意を払っています。

  • 抗生物質の選び方 お薬が「肝臓で代謝されるタイプ」なのか「腎臓から排泄されるタイプ」なのかをしっかり見極めます。
    肝臓代謝型の抗生物質(マクロライド系、テトラサイクリン系、リンコマイシン系、あるいはセフェム系の一部であるロセフィンなど)を優先的に選んだり、腎臓排泄型の場合は安全な量まで減量して処方いたしますのでご安心ください。

  • 痛み止め(鎮痛剤)の選び方 一般的な歯科の痛み止めであるNSAIDs(ロキソニンやボルタレンなど)は、腎障害をさらに進めてしまう恐れがあるため、腎臓への負担が少ないアセトアミノフェン(商品名:カロナールなど)を選択して処方いたします。

透析を受けられている患者さんへの配慮

抜歯など、出血を伴う外科処置を行う場合には、原則として「非透析日(透析をしない日)」に行うのが望ましいとされています。
これは、透析時に血液をサラサラにするお薬(ヘパリン)を使用するため、血が止まりにくくなるからです。

どうしても透析日に処置が必要な場合や、出血が長引くと予想される場合は、担当の透析医の先生に事前に連絡を取り、可能であれば透析時のお薬を「低分子ヘパリン」などに変更していただくことで、出血リスクをコントロールします。

もし、非常に大きな出血が予想される難易度の高い処置が必要な場合は、全身管理ができる専門医療機関(大学病院など)へご紹介し、安全に治療を受けていただく判断もいたします。

最後に

歯科治療は、患者さん一人ひとりの全身状態をしっかり考慮し、慎重に行う必要があります。 お飲みになっているお薬が変わったり、量が増えたりした場合は、どんな些細なことでも必ず私たちにお知らせください。

当院では、患者さんの全身の健康に寄り添った安全な治療を心がけております。
ご不安な点やご質問がありましたら、いつでもお気軽にお申し付けください。

口腔外科医 鈴木 孝美

谷村歯科医院
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