歯科のレントゲンについて

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こんにちは、谷村歯科医院 院長の谷村です。


医療を行う上でとても重要な機器の一つにレントゲン装置があります。
レントゲン機器は歯科治療を行う上で最も重要な診断装置と言えるでしょう。
私は大学を卒業後、歯科大学の歯科放射線講座に在籍しておりました。

さらに現在は日本歯科放射線学会の認定医になりましたので、レントゲンでの診断をとても大事にしています。


医療の現場ではごく一般的にレントゲン撮影が行われておりますが、特に歯科においてはレントゲン撮影が不可欠です。
なぜならば歯科治療は見えない部分の治療が多いので、レントゲンがないと診断能力が40%に下がると言われています。
そのため、診療中は常にレントゲンの画像をみながら治療を行っています。
レントゲン装置は直接見ることができないところも見ることができる、とても便利な診断機器で有効である反面、人体に有害な部分(被ばく)も併せ持っています。
そこで今回は、歯科のレントゲンについて説明いたします。


レントゲンとは?
レントゲンとは電磁波のひとつで、X線といいます。
そのため、レントゲン撮影をする機械も、X線撮影装置と呼ばれています。
そもそも電磁波とは何かというと、電気が流れるところに発生する波のことです。
我々が普段見える可視光線、殺菌に使う紫外線、熱を発生させる赤外線、携帯の電波などがあります。
この中で、波長が1pm~10nmの電磁波をX線と言います。
電磁波について説明すると長くなりますので、また別の機会にいたします。

ではなぜX線をレントゲンというかというと、1895年にドイツのヴィルヘルム・レントゲンという物理学者が発見したからです。
ちなみにこのレントゲン博士は第1回のノーベル物理学賞を受賞しています。


レントゲン撮影は安全?

レントゲンを医療で使用する場合は、診断治療があります。
このうち治療は、主に癌などの放射線治療になります。
肺がん治療で放射線治療で使用するX線量は60シーベルト(1週間、治療部位のみ)とかなりの線量を当てますので、被ばくによる影響は無視できません。
ただし肺がんは死亡率の非常に高いがんなので、有効性が副作用を上回ります。

治療に比べて診断に使用するレントゲン量は桁違いに少ないので、問題ないと考えていいでしょう。
年に1度の健康診断でも胸のレントゲンを撮影しますのが、この撮影で癌になったり副作用が出たということは今までに全くありません。


歯科医院のレントゲン撮影は安全?

こちらは東京都歯科医師会が作製している放射線被ばくの図になります。


https://www.tokyo-da.org/images/pdf/1108.pdf


これによると、歯科で使用するレントゲンの被ばく量は0.01~0.03ミリシーベルトとなります。
つまり、飛行機でニューヨークを往復する際に被ばくする自然放射線量の10分の1以下なのです。
たとえ飛行機に乗らなくても普通に生活しているだけで我々は1年間で2.4ミリシーベルトの自然放射線量を浴びています。
ちなみに肺がんの治療で使用するX線量は60シーベルトですから、歯科用X線の被ばく量はなんと600万分の1ということになります。
さらに歯科のレントゲン撮影は健康診断の際の胸のレントゲン撮影の被ばく量の5~2分の1ですが、それだけでなく歯科では胸に大きな鉛の入ったエプロンをかけるので、被ばく量はもはや限りなくゼロに近いです。
一般的には、歯科用X線撮影は1度に17万枚!撮影しないと人体への影響は出ないといわれています。
またX線は体内に蓄積されるものではないので、前回の撮影から日が浅いのでよくないのでは?と心配する必要もありません。


ごくまれに主に年配の方ですが、X線被ばくを心配してかたくなにレントゲン撮影を拒否される方がいらっしゃいます。
「副作用が怖い」「歯でなくて口内炎なので撮る必要はない」「最近胸のレントゲンを撮ったばかりなのでもう撮りたくない」「余計なことはしたくない」など
しかし今まで述べたように、歯科のレントゲン撮影の被ばく量は限りなくゼロに近く体内に蓄積されるものでもなく、また歯科治療ではレントゲン撮影を行わないと正確な診断と治療ができず、誤診や治療ミスにつながります。
また撮影する必要があるか無いかは、歯科医師が決めることなので、患者さんの判断で撮る撮らないを決めるものではありません。


なお当院では初診時にはレントゲン撮影を行う旨をネット予約の際には記載しております。
それでもレントゲン撮影をされたくない患者さまは、当院での受診をお断りしております。



このようにレントゲン撮影は歯科治療では不可欠ですが、例外的に妊娠中または妊娠の可能性のある方は緊急時以外の撮影は行いません。
もしも妊娠が撮影後に後から分かったとしても、胎児が奇形や精神発達遅延を出現する放射線量は50ミリシーベルト以上なので、歯科医院のレントゲン撮影は問題ありませんのでご安心ください。