入れ歯の種類
こんにちは、谷村歯科医院 院長の谷村です。
今日は、『入れ歯の種類』について、少し詳しくお話ししたいと思います。
入れ歯とは、歯を失ってしまった場合に、その機能を補うための『取り外し式の人工歯』です。
歯を失ったと聞くと、まず入れ歯を思い浮かべる方も多いですが、その種類や構造は実にさまざまです。
入れ歯には大きく分けて次の2種類があります。
- 部分的に歯がないときに使う『部分入れ歯』
- 歯がすべてなくなったときに使う『総入れ歯』
■ ブリッジと部分入れ歯の違い
診療中、患者さんとお話をしていると、部分入れ歯のことを『ブリッジ』と表現される方が時々いらっしゃいます。
しかし、これはまったく別の治療法です。
ブリッジは、歯が無くなった部分の前後の歯を削り、そこに『連結した被せ物(銀歯やセラミック)』を装着する治療です。
接着剤で固定するため、取り外しはできません。
一方、部分入れ歯は取り外し式で、残っている歯に金属のバネやその他の構造を引っかけて使います。
どちらも失った歯を補う治療ですが、構造も使い方も異なります。
そのため、治療の選択肢として理解していただく上で、この違いはとても大切です。
入れ歯にはどんな種類がある?
入れ歯は、先ほど述べた『部分入れ歯』『総入れ歯』という分類のほかに、
保険適用かどうか、使用される素材の種類でも大きく分かれます。
部分入れ歯は特に構造が複雑で、残っている歯を支えにするための金属のバネ(クラスプ)を利用するものが一般的です。
最近では、この“金属のバネが見えるのが嫌だ”という方のために、見た目の自然さに配慮した入れ歯も多数開発されています。
■ 保険適用の入れ歯の特徴
保険の入れ歯の最大のメリットは、何と言っても費用が安く抑えられる点です。
多くの方にとって導入しやすい治療法であり、最低限の機能を確保するには十分です。
しかし、保険適用のルールは非常に厳しく、個々の患者さんの細かな希望や快適性に合わせて自由に設計を変えることができません。
- 金属のバネが見えてしまう
- 入れ歯が厚くて話しにくい、違和感が強い
- 熱さ・冷たさが感じにくい
- プラスチックが徐々に削れて噛む面が減りやすい
これらの問題点があっても、素材や形の自由度がないため改善が難しいケースもあります。
また、保険の入れ歯には6ヶ月ルールがあり、同じ部位の新しい入れ歯を作るには半年待つ必要があります。他院でも同様です。
保険外(自費)の入れ歯 – 快適性と耐久性の追求
保険の入れ歯の弱点を補うために、保険外(自費)ではさまざまな入れ歯が選べます。
以下では特によく使用される素材や構造について詳しくご紹介します。
■ 金属床義歯(きんぞくしょうの入れ歯)
金属床は、口の中の“天井”に当たる部分を金属でつくった入れ歯です。
保険のプラスチック製と比べて非常に薄く作れるため、装着したときの違和感が大幅に少なくなります。
【金属床のメリット】
- 薄いので舌の動きが楽になり、話しやすい
- 温度が伝わりやすく、食事がおいしく感じられる
- プラスチック床より割れにくく、耐久性が高い
【使用される金属】
コバルトクロム合金:昔から使われている実績ある金属。強度が高く薄く作れる。
チタン合金:とても軽く、金属アレルギーのリスクが低い。加工が難しいためやや高額。
チタン床は本当に軽く、初めて手にする患者さんからは『えっ、入れ歯ってこんなに軽いの?』と驚かれることがよくあります。
■ 金属のバネが見えない「ノンクラスプデンチャー」
部分入れ歯特有のバネが見えることが気になる方に選ばれるのが、
ノンクラスプデンチャー(フレキシブルデンチャー)と呼ばれるタイプです。
・金属を使わず、歯ぐきに似たピンク色の樹脂でバネの役割を果たすため、見た目がとても自然
・装着していても周囲の人から入れ歯と気づかれにくい
【使用される素材の違い】
- ポリアミド:非常に柔らかく痛みが出にくいが、修理がほぼできない。強く噛むとたわむ。
- ポリエステル:適度な弾力。修理も可能でバランスが良い。
- ポリカーボネート:スーツケースの素材としても有名。硬くて丈夫、修理も可能。
素材によって性質が大きく異なるため、噛む力・残っている歯の状態・審美性の希望などを考慮して選ぶことが重要です。
■ その他の特殊な入れ歯
自費の入れ歯には、ほかにも様々な特殊構造があります。
- 磁石式入れ歯:残っている歯に磁石を埋め込み、入れ歯を強く安定させる方法。
- アタッチメント義歯:バネの代わりに特殊な鍵(ロック装置)で固定し、見た目が自然。
- コーヌスクローネ義歯:二重構造の冠で強固に固定し、非常に安定性が高い。
これらは構造が複雑なぶん、適合性や安定性が高く、見た目も自然です。
入れ歯は「作ったら終わり」ではありません
どの種類の入れ歯を選んでも、入れ歯は一生ぴったりのままではありません。
理由は、お口の中の環境が常に変化していくためです。
- 歯ぐきの厚みが変わる
- 顎の骨がやせていく(加齢・噛む力の変化)
- 残っている歯の位置が少しずつ動く
入れ歯は硬い素材で作られているため、こうした変化に合わせて自然に形が変わることはありません。
その結果、数年使用すると…
- 入れ歯がカタカタ動く
- 歯ぐきが痛くなる
- 食事がしにくくなる
という状態になります。
そのため、入れ歯に特に問題がなくても、定期的に歯科医院で調整することが非常に大切です。
調整のタイミングを逃してしまうと、歯ぐきが傷ついたり、かえって入れ歯が合わなくなることもあります。
壊れてしまった入れ歯はすぐに作れません
『まだ使えるから』『多少違和感があってもガマンすればいい』と思って無理に使い続けると、
いよいよ壊れてしまったときに、とても困ることになります。
新しい入れ歯を作るには、通常数週間の期間が必要です。
その間、入れ歯がない状態が続き、食事や会話に支障が出て大変ご不便をおかけしてしまいます。
そのため、入れ歯は『壊れる前に調整する』『不具合が小さいうちに相談する』ことが非常に重要です。
入れ歯は「体の一部」– 質の良い入れ歯を選ぶ大切さ
入れ歯は、単なる道具ではなく『自分の体の一部』になります。
毎日つけるものだからこそ、快適で、自信を持って使えることが大切です。
保険の入れ歯が悪い、というわけではありません。
しかし、生活スタイル・審美性・噛む力・お口の状態などによって、保険外の入れ歯がより快適に使える場合もあります。
どの入れ歯を選ぶかは、単に費用だけではなく、生活の質(QOL)にも大きく関わってきます。
遠慮なくご相談いただき、納得のいく選択を一緒にしていきましょう。
入れ歯は一生ものではありませんが、正しく作り、定期的に調整し、丁寧に使うことで、快適に長く使い続けることができます。
『入れ歯が合わない』『痛い』『目立たないものが欲しい』など、どんな小さなことでも構いませんので、お気軽に当院へご相談ください。
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