舌痛症について
こんにちは、歯科医師の鈴木孝美です。
今回は舌がヒリヒリ、ピリピリしたり、痛かったりする『舌痛症』について現在私が所属する学会で分かっている事があるのでそれについて報告したいと思います。
舌痛症(BMS)の分類
①一次性BMS
舌に傷など見た目の変化がなく、全身的な病気も無い状態での舌の『痛み』『ひりひり』が存在する状態です。
②二次性BMS
全身的なご病気(糖尿病、貧血、口腔粘膜の異常)がある方が、舌にも痛みやヒリヒリがある状態です。
二次性BMSの場合は原因の病気の治療で治ることが多いです。
二次性であるご病気や舌の傷など無いことをしっかり確認します。
そして二次性ではない場合、多くの舌痛症は一次性BMSに該当します。
原因が分からないのに自分の舌が痛い、ヒリヒリするなんて不安になりますよね。
この一次性BMSの原因が三つ分かっていますのでご説明いたします。
一つ目の原因
舌の知覚神経は実は二つあり、三叉神経の中の舌神経と鼓索神経が舌前3分の2と舌後方3分の1で二つの神経が混在しています。
この二つの神経は研究により二つあることで抑制(お互いに暴走しないように)し合っているのです。
例えは、一つの鼓索神経が傷ついて障害を受けるともう一方の舌神経の機能を抑制できないため神経が暴走してしまう状態が原因と考えられています。
二つ目の原因
舌痛症の患者さんの舌の細胞診(組織を取って病理検査する)を行った結果より分かった原因なのですが、舌痛症の患者さんの細胞にはTRPV1という主に痛みや熱の刺激を感知するイオンチヤンネル型受容体であります。
カプサイシン、43度以上の高温、わさび成分のアリルイソチオシアネートにより活性化され、活性化されると灼熱感のある痛みを引き起こすのです。
舌痛症の患者さんはまさに舌の灼熱感があるため、この理論はとても納得ができます。
三つ目の原因
舌に繰り返される刺激やそれによるストレスにて脳に誤作動が生じることによります。
局所ではなく、脳の中枢が痛みを間違って伝え続けてしまうことによる原因です。
治療法
3つの原因を考えて、アメリカの学会や論文や様々な勉強会で拝聴して今時点で有効な治療法をお話しします。
二つ目の原因より、TRPV1はカプサイシン受容体です。
この受容体は、過度にカプサイシンを与える事で一時的にその痛みが伝わる事が低下する事が分かっているため、口の中にカプサイシンを停滞させる事により治療する事もあるようです。
50㎖の水にタバスコを1~2滴たらした水を口に含ませる治療もあります。
一つ目と三つ目の原因から、症状がお辛い場合は、中枢や神経の暴走を止める抗うつ薬や抗てんかん薬、中枢での神経の間の痛みの伝達を遮断する薬などを使う治療もあります。
さらには漢方薬の治療もあり、むくみの治療に使われる五苓散という漢方薬が舌痛症に効くとの報告があり、一日三回食前にお湯に溶かして服用するとの治療法もあります。
ラフチジンという胃潰瘍の薬がTRPV1受容体の拮抗薬、つまりはTRPV1受容体を働かせないとの事も分かっており、その薬を使用する事もあるようです。
また、口の中をより清潔に保つという意味で舌痛症に抗真菌薬を使用することもあるようです。
ここに列記した治療法は、まだ保険診療では歯科医院で認められていないものが多く、当院では保険診療内でできる患者さんの症状に合わせた治療を行っておりますので、ご安心なさって下さい。
また、当院の治療にてなかなか改善しない場合は、大きな大学病院と連携していますので迅速にご紹介も致しております。
舌痛症は治らない病気ではないため、何かご不安な事がございましたら、何なりとご相談くださいませ。
より詳しく原因を直接ご説明致します。
歯科医師 鈴木孝美
谷村歯科医院
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