むし歯の進行度と治療法‎𖤐 ̖́-‬

 

皆さんは 『むし歯』 と聞くと、どのようなイメージをお持ちでしょうか?
 
「黒くなってきたら削って詰める」
「痛くなったら歯医者さんに行けばいい」
 
という印象をお持ちの方も多いかもしれません。
実は、むし歯は進行具合によって、『C1〜C4』という4つのステージに分類されていることをご存じでしょうか。
この分類は、歯科医師や歯科衛生士が歯の状態を把握したり、患者さまに今のお口の状況を分かりやすくお伝えするために、とてもよく使われているものです。
むし歯は放置すれば確実に進行してしまいますが、実はごく初期の段階であれば『削らずに経過観察』ができるケースもあります。
逆に『ちょっとしみるけど、そのうち治るだろう』と放っておくと、治療が大がかりになってしまうことも少なくありません。
  
そこで今回は、むし歯の4つのステージで歯にどんな変化が起きているのか、それぞれの段階でどのような治療が必要になるのか、そしてむし歯を進行させないためのポイントについて、歯科衛生士の視点から分かりやすくお話ししたいと思います。
 

C1:エナメル質に限局した初期のむし歯

C1は、歯の一番外側にある硬い層『エナメル質』の中だけでとどまっている、比較的軽度のむし歯です。
この段階では、まだ大きな穴があいているわけではなく、歯の表面が白く濁ったように見えたり、うっすらと茶色っぽく見える程度のことも少なくありません。

【特徴】

  • 痛みはほとんどなく、自覚症状がないことが多い
  • 鏡で見ても、「なんとなく白っぽい?」程度で気づきにくい
  • この段階で見つかれば、治療がとても簡単で済む

むし歯は、最初は歯の表面のカルシウムやリンが溶け出す『脱灰(だっかい)』という状態から始まります。
このとき、まだ歯に穴はあいておらず、エナメル質の内部で静かに進行しているイメージです。

【治療】

C1のごく初期の段階であれば、削らずに経過をみられることもあります。
フッ素塗布や、再石灰化(歯の表面を修復する力)を促すケアを中心に行い、日常の歯磨きや食生活を見直すことで、進行を食い止めることを目指します。

歯科医院では、
・フッ素塗布
・ブラッシング指導(磨き残しが多いところのチェック)
・食生活(間食や甘い飲み物の頻度)の確認
などを行い、患者さまと一緒にむし歯を『これ以上悪くしない』ための対策を考えていきます。

C1は、『定期検診でしか見つけられないことが多いむし歯』ともいえます。
痛みがなくても、定期的に歯科医院でチェックを受けていただくことがとても大切です。


C2:象牙質まで進行したむし歯

C2は、エナメル質のさらに内側にある『象牙質(ぞうげしつ)』までむし歯が進行した状態です。
エナメル質に比べて象牙質は柔らかく、むし歯が進みやすい性質があります。

【特徴】

  • 冷たいものがしみる、甘いものを食べると一瞬ピリッとする
  • むし歯の穴がはっきりしてきて、自分でも見て分かることがある
  • この段階から、放置すると進行が早くなる

「少ししみるけど、すぐにおさまるから放っておこう」という方も多いのですが、
そのままにしておくとC3(神経まで進行したむし歯)へと一気に悪化してしまうことがあります。

【治療】

C2になると、多くの場合、むし歯の部分を削って詰める治療が必要になります。
当院では、むし歯の範囲や噛み合わせ、見た目のご希望などを考慮しながら、適切な材料を選んで治療を行います。

  • 前歯:CR(コンポジットレジン/白い樹脂)による詰め物が基本
  • 奥歯:詰め物(セラミックまたは銀歯)での治療が中心

前歯は見た目がとても大切なので、色を歯に合わせやすい白い樹脂を使うことがほとんどです。
一方、奥歯は噛む力が強くかかる場所なので、樹脂よりも強度や耐久性に優れたセラミックや金属を選ぶことが多くなります。

「まだ痛みはそこまで強くないから…」と先送りにしてしまうと削る量が増え、治療も複雑になってしまいます。
C2の段階で治療ができれば、比較的シンプルな治療で済むことが多いので、『少しでも変だな』と感じたら早めの受診をおすすめします。


C3:神経(歯髄)まで到達したむし歯

C3まで進行すると、むし歯は歯の神経(歯髄)にまで達しています。
この段階になると、痛みが強くなり、日常生活にも支障をきたすことがあります。

【特徴】

  • 強い痛みを伴うことが多い
  • 何もしていなくてもズキズキと痛む
  • 夜中に急に痛み出し、眠れないことがある
  • 温かいものがしみていつまでも痛みが続くことも

歯の神経に細菌が入り込むと、炎症を起こし、いわゆる『神経がやられた状態』になります。
この状態になると、市販の痛み止めを飲んでも効きにくいことがあり、患者さまにとってはとてもつらい状況です。

【治療】

C3の治療では、『根管治療(こんかんちりょう)』が必要になります。
根管治療とは、歯の中の神経が通っている細い管(根管)から、細菌に感染した神経や汚れを取り除き、
中をきれいに洗浄・消毒してから薬を詰め、しっかりと密閉する治療です。

根管治療は一度で終わることは少なく、数回に分けて丁寧に治療を進めていきます。
根管の形は人それぞれで、曲がっていたり、分かれていたりと複雑な場合もあるため、非常に繊細な治療が必要となります。

根管治療が終わった後は、弱くなった歯を守るために『被せ物(クラウン)』を装着することがほとんどです。
歯の頭の部分が大きく削られているため、そのままでは割れてしまうリスクが高く、
外側をしっかり覆ってあげる必要があるのです。

C3の段階まで進んでしまうと、治療回数も費用もC1・C2と比べて大きく増えてしまいます。
『なんとなくしみる』『たまに痛むけど我慢できる』というサインを見逃さず、早めに受診することの大切さがここにあります。


C4:歯の根だけが残る重度のむし歯

C4は、歯の頭の部分がほとんど崩れてしまい、『歯の根だけが残っている状態』です。
見た目は、歯ぐきから黒い根っこだけが少し見えている、というケースもあります。

【特徴】

  • 神経がすでに死んでいるため、痛みがないこともある
  • しかし根の先に膿がたまり、腫れや激痛を引き起こすことがある
  • 膿や汚れがたまり、強い口臭の原因になることも

一見すると『痛くないから放っておいても大丈夫そう』に思えてしまいますが、
実際にはお口の中の健康だけでなく、全身の健康にも影響を与えることがある状態です。

【治療】

C4まで進んでしまった歯は、
残せるかどうかの判断がとても重要になります。

  • 残せる場合:根管治療 → 土台(コア) → 被せ物 残せてもC3の時よりも条件が厳しくなります
  • 残せない場合:抜歯 → インプラント・ブリッジ・入れ歯などで補う

歯ぐきの下の方までむし歯が進んでいたり、根が割れてしまっている場合は、残念ながら抜歯となることも少なくありません。
抜歯後は、そのまま放置してしまうと隣の歯が倒れてきたり、噛み合わせが崩れてしまうため、
何らかの方法で歯を補う必要があります。

C4の状態は、治療回数・治療期間・費用ともに大きな負担となることが多いため、
やはり『むし歯をC1・C2の段階で見つけて治療すること』がとても大切です。


むし歯を防ぐ5つのポイント☆彡

むし歯は『生活習慣病』とも言われるように、毎日の習慣と深く結びついています。
ここでは、今日から実践できる予防のポイントを5つご紹介します。

1.フッ素入り歯磨き粉を使う(濃度1450ppm推奨)

フッ素には、
・歯の再石灰化を促す
・むし歯菌の活動を抑える
といった働きがあります。
大人の方であれば、濃度1450ppmのフッ素入り歯磨き粉がおすすめです。
歯磨きのあとは、強くゆすぎすぎず、軽く1〜2回すすぐ程度にするとフッ素の効果が長持ちします。

2.間食は時間を決める(だらだら食べをしない)

お口の中は、飲食をするたびに酸性に傾きます。
長時間ずっと何かを食べていたり、甘い飲み物をちびちび飲み続けていると、
お口の中がずっと酸性のままになり、むし歯がとても進みやすくなります。

間食は時間を決めて短時間で済ませ、その後はお水やお茶で軽く口をすすぐなどして、
お口の中がリセットされる時間を作ってあげることが大切です。

3.夜の歯磨きは特に丁寧に

就寝中は唾液の分泌が減るため、むし歯菌や歯周病菌が増えやすくなります。
『朝は時間がないけれど、夜はしっかり磨く』という意識を持つだけでも、お口の健康状態は大きく変わります。

フロス(糸ようじ)や歯間ブラシも併用して、歯と歯の間の汚れもしっかりと落としてあげましょう。

4.定期検診(3〜6ヶ月)で初期むし歯を発見

C1のような初期のむし歯は、自分ではほとんど気づくことができません。
3〜6ヶ月に一度のペースで定期検診を受けていただくことで、
『痛くなる前の小さなむし歯』を早めに発見し、最小限の治療で済ませることができます。

5.唾液を減らさない生活(水分補給・口呼吸対策・ストレスケア)

唾液はお口の健康を守る大切な味方です。
水分をしっかりとること、口呼吸を減らすこと、ストレスを溜めすぎないことなども、むし歯予防につながります。


《まとめ》

むし歯は自然に治ることはありませんが、早く見つければ見つけるほど、治療は簡単に済みます。

  • C1:表面だけの初期むし歯 → 削らずに経過を見ることも可能
  • C2:象牙質に進行 → 前歯はCR(白い樹脂)、奥歯は詰め物(セラミック or 銀歯)で治療
  • C3:神経に到達 → 根管治療が必要になり、被せ物で補うことが多い
  • C4:歯がほぼ崩壊 → 場合によっては抜歯となり、インプラント・ブリッジ・入れ歯などで補う

「痛くないから大丈夫」と思っていても、痛みが出たときにはC2〜C3まで進行していることが少なくありません。

「しみる気がする」
「黒いところが気になる」
「久しぶりの歯医者で不安」

そんな小さなサインが、実は早期発見のチャンスです。

不安なことがあれば、どんな些細なことでもかまいませんので、ぜひ一度ご相談ください。
一緒に、お口の健康を守っていきましょう。

歯科衛生士 辻村

 

谷村歯科医院
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